一般的な企業では当たり前になってきている「カスタマーサクセス」。
特にIT業界では新規ユーザーの獲得よりも重視されていると言ってもいいでしょう。
「カスタマーサクセス」を簡単に説明すると、ITの場合、導入支援(契約直後、ちゃんと使えるようになるか)にはじまり、サービスを導入してから、そのお客さまがそのサービスを使って成功(サクセス)するストーリーを第一目的として支援することを言います。
「カスタマーサクセス」の度合いが高いと、違う機能や連携するサービスの導入にも繋がり、セルアップされることで、お客さまのサクセスとサービス提供側の成功がリンクします。これが理想的な「カスタマーサクセス」施策になると思います。
では、美容室での「カスタマーサクセス」とはどのようなことでしょう。
「カスタマーサクセス」と「顧客満足度」を意味的に混同する美容室
「カスタマーサクセス」を日本語にしたとき、「顧客満足度」と訳されることがほとんどです。
表現としては間違っていないのですが、この変換をした瞬間に誤解というか、ニュアンスが変わってくる気がしています。
「サクセス」とは成功ですので、具体的であり、理想的であり、そこまでのストーリーが重要になります。
一方「満足度」とは、ある程度の幅があり、”やや満足”から”超満足”まで受け取る人の主観によって変わってきます。
この具体的である「サクセス」と属人的な「満足度」を同じレイヤーで語ると大きなズレが生じてしまうと思っています。
カスタマーサクセスは家で、満足度は美容室で。
もうひとつ大きな課題は、達成度の測定場所の問題です。
ITにおける”サクセス”はお客さまの結果が取れる場所が測定場所になります(簡単に言えば、場所はあんまり関係ない)。一方で、美容室の満足度と言われると、美容室のなかでのことと捉えてしまいがちです。つまり、サロンワークのなかでいかに満足いただくか、という観点になってしまいます。これは「カスタマーサクセス」ではありません。
このように捉え直すだけで、一般企業の「カスタマーサクセス」と美容室の「顧客満足度」には大きな隔たりがあることがわかります。
美容室は「カスタマーサクセス」を測定しにくい?
また事業形態も大きな障壁となってきます。
ITの「サクセス」は継続的な支援が必要ですし、実際に継続的な支援をすることができます。この場合、改善のチャンスは多く、お客さまとの接点もたくさん設定することができます。
一方、美容室の「満足度」の場合は、その場である種の答えが出てしまいます。そしてその後のお客さまとの接点が劇的に少なく、技術的にも継続的な支援(直接的な)は難しいのが現状です。
効果測定もとても難しいです。
お客さまにとっての効果を測定しようにも、再来率くらいしか測定のしようがありません。こうなると挽回のチャンス、方法はかなり限られてしまいます。反対にITの場合は測定方法をたくさん設定することができます。
では美容室における「カスタマーサクセス」はできないのでしょうか。
思考を少しズラしてみることで見えるサクセス
発想を少しIT寄りにしてみるのはいかがでしょうか。
新規のお客さまがいらっしゃった場合、それは導入支援の場と考えてみてください。
POSなんかを導入するときに、営業担当者さんが来て、使い方などを説明してくれますよね。それと同じです。なんならITよりも、こっち(美容師)のチカラで、最初から理想形に仕上げられる(髪型)のですから、導入支援は楽なはずです。
次に重要なのは、どこをお客さまの「サクセス」に設定するか、です。
ここで美容師さんはストーリーに注目しがちです。例えば、「朝らくちん」とか「セットしやすい」などです。しかし、それはサクセスではありません。朝らくちんであるあとに、何かしらのサクセスがあるはずです。例えば、職場の同僚から「いつも綺麗ね」って言われるとか。そのお客さまひとりひとりのサクセスを確認して、そこへのストーリーとして「朝らくちん」があるわけです。
このサクセスを確認する方法は、カウンセリングの際に、「どうなりたいか」よりも、「なぜなりたいか」を確認することで見出すことができます。(SNSでバズっている人はここができている気がします)
このように「サクセス」ポイントを設定してから導入支援(施術)に入り、サクセスストーリー(朝らくちん)の方法を教えて、改善提案(次回予約)への流れをサイクルとして設定していくことで、ひとつの「カスタマーサクセス」への道が開けると思います。
めんどくさがらずに、デジタルで追いかける仕組み
さらにデジタルの視点から言えば、例えば公式LINEにて、定期的に個別支援を実施する、とか、オンラインにコミュニティを作成して、成功への道筋を追いかけるなど、個別具体的な方法を実施することで、カスタマーサクセス度合いは高まっていきます。
このプロセスをお客さまと一緒に伴走することで、強固な顧客化、単価アップ、お客さまとの一体化という理想的な顧客関係を構築することができると思います。
で、そうなんです、カスタマーサクセスってとても時間と労力がかかることなんです。
しかし、気づいてませんか?HPBのリクルートの担当者さんがとても丁寧なことに、導入しているPOS会社の営業さんがこまめに対応してくれることに。すでに多くの一般企業で「カスタマーサクセス」は重要な施策になっているのです。となると、一般のお客さまにとっても当たり前のことになっているということ。
これを避けて通ると、いつもの新規獲得ゲームの真っ只中に置いてけぼりになるだけだと思います。
ほかのサロンは面倒くさいのでやっていないでしょう。であるならば、ひとり勝ちですね。
デジタルに関する知識は、サロン業務のワークステーション「美歴」も参考にしてみてください。
デジタル化を始める前に、ぜひ、読んでみてください。美容室のデジタル集客を活かすのは”ストーリー理解”がそこにあるか?