あなたの長年の経験が”無価値”になっています。
技術職とは豊富な経験が生かされて、価値になり、多くは金銭的な結果を生み出します。
しかし、その”経験”が無価値になる時代が到来しました。
伝わりにくいので、少し詳しく説明します。
まず前提にあるのは、「技術が無価値になったのではない」ということです。逆にSNSで見ている人を惹きつけるには技術が必要です。料理が上手だったり、ダンスが上手だったり。それらは立派な技術です。
ですので、技術の重要性は、年々、増しています。
時間が技術力を高めてくれるという幻想
大きく変わったのは、「経験豊富=技術力が高い」という概念です。もちろん伝統技術などは時間と経験が豊富であることが重要でありますが、一般的な職業における技術は必ずしも時間だけが創り出すものではないという認識が大勢を占めるようになっています。数年前の、堀江貴文さんの「寿司屋に修行は不要」と言って物議を醸したのは記憶に新しく、「飲食塾」卒業から11ヶ月でミシュランガイドに掲載される寿司店が生まれたことも大いに話題になりました。つまり、理論的に、または分析をもとにしたら技術力を身につけることができるということです。
繰り返しますが、間違えてはいけないのは、技術が重要であるという大前提です。
技術職において、「長年、経験しているから偉い、正しい」という概念は、35歳以下では消滅しつつあります。
現代では、「先輩技術者の答えが正解」は不正解になっています。
「そのときとは、状況が違う」の”そのとき”の速度が劇速い
では次に、「経験が無価値になる」とはどういうことでしょうか。
現代は、すごい速度で環境が変化します。環境が変化する前の状況で得られた経験が、環境変化後では通用しなくなることがたくさんあります。つまり長年、蓄積してきた経験が役に立たなくなるということです。
重要なのは、過去の経験から今も通じる共通の経験値を選択できるかどうか、だと思います。
10歳も年齢が違えば、過去の経験から物事を言われても、ピンとこないと思います。その瞬間に、この人は通じないと判断されてしまいます。
「それってSNSができる前の話ですよね」「それってInstagramが生まれる前の話ですよね」「それってコロナが発生する前の話ですよね」「それってTikTokが流行る前の話ですよね」
もはや、スマホができる前の経験は無価値になっています。
また経験が変革を邪魔してしまうこともあります。苦しんで得た経験は成功体験として、その人の幹となります。これはとても大事なことですが、その幹が、その人の変化を鈍化させてしまいます。
40代以上の野球経験者であれば、こんな経験があると思います。ボールを打つとき、下からバットを振り出すスウィングを「アッパースウィング」と言われて、ダメな打撃方法と指導されてきたはずです。
しかし、2010年以降の野球界では、「最適な打球速度と角度が重要である」(バレルゾーン)という理論が主流になり、多くのメジャーリーガーや日本のプロ野球選手が”いわゆるアッパースウィング”を採用しています。大谷翔平選手も、そのひとりです。私が高校生の頃であれば、大谷翔平選手のようなスウィングをしていたら、厳しく怒られていたでしょう。この理論は「フライボール革命」と言われ、野球史に残る大変革でした。
求められるのは経験の共通化とバージョンアップ
このように、環境の変化が経験を無価値にする、変化を邪魔する経験は無価値である、というふたつの側面から「経験が無価値になる」と言えます。
では、私みたいなおじさんはどうしたらいいのでしょうか。なんなら経験を売り物しているのに、それが無価値となってしまったら。
正解かどうかはわかりませんが、なんとなく解決方法が見えてきました。
(1)経験を共通化する
スマホ誕生以前の私の経験など、今の人たちに当てはまることはありません。しかし、古い経験と、今、起きている出来事にも共通項を見つけることはできます。大きく変化したと言っても、同じ人間が行うことですので、何かしらの共通項を見つけることができるものです。この古い経験と今の出来事の”共通化”をすることが大事だと思うようになりました。
中学くらいの数学で「共通項でくくる」なんてのがあったような気がしますが、少しでも共通化できると、いきなり過去の経験から今の答えを導き出すことができる(ことがあります)。
(2)経験のバージョンアップ
年齢を重ねると、新しいことにチャレンジしなくなります。人によって理由は様々だと思います。しかし、チャレンジしてみた方がいいと思います。私もこのブログを新しく作り直しました。ワードプレスをいちから勉強し直しています。またYouTubeなんかもはじめてみました。ぜんぜん視聴数は伸びませんが。
ただこれらのことから学んだことがたくさんありました。そして、過去の経験と重なる部分もたくさんありました。生かせたところも数多くあると思います。私はこれを経験のバージョンアップと呼んでいます。
「経験が無価値になる」年齢を重ねて、時代の大きな変化を目の前にして、私自身が強く意識してます。
個人レベルであれば、置いていかれるだけですので、いいかもしれませんが、これが経営となると死活問題になります。年齢を重ねた経験豊富な経営者さんは、これまでの経験が無価値になっているという自覚と、いかに生かしていくかというリノベーションに着手することをお勧めします。
デジタルに関する知識は、サロン業務のワークステーション「美歴」も参考にしてみてください。
またサロン経営者の後継者育成については、過去記事「ジャニーズに見る後継者育成と経営ギャップ崩壊に備えること」もご参照ください。