美容室のデジタル化支援する石渡武臣
美容室のデジタル化支援する石渡武臣

どんなことでも同じですが、目的設定、ゴール設定をしない行動計画はないと思います。
美容室の店舗公式LINEも、まさに同じことが言えます。

ゴール設定とは何か?

一般的な美容室の運用で想定されるゴール設定(目的)について検討してみましょう。
1.集客
2.顧客化
3.売上向上
4.予約ルート
5.その他

1.集客
集客とありますが、一般的な美容室において、公式LINEで新規集客をするのはかなり困難です。大手のチェーン店であれば、様々な場所にあるので、戦略として検討できます。しかし、エリアが絞られる小規模店であれば、新規集客をゴールにするのは、単体ではハードルが高いです。
となると、既存のお客さまの来店促進、ということに視点が置かれると思います。

感想

既存客の予約促進を目的とすると、恐らく美容室が求めるのは、平日への顧客誘導ということになります。ここがやっかいなポイントです。私が知る限り、よく見かけるのは”平日クーポン”です。平日クーポンによっていくらかは動くお客さまもいらっしゃいますが、恐らく期待するほどの結果にならないのが現実だと思います。

【ゴール設定】平日の予約率、予約数の向上
実施して半年間で公式LINEのお友だちのうち、5%でも平日の予約数が増えたら先が見えます。

2.顧客化
そもそも、美容室では、どうしたら顧客化できるのか?この方法論は美容室ごとに独自の考えがあると思います。そのなかのひとつに顧客コミュニケーションがあります。いかにお客さまとエンゲージメントを高めて、親和性を、親近感を感じてもらうか、という手法です。そのために美容室公式LINEでできるのは 1 to 1 のメッセージによるコミュニケーションです。

感想

この場合の課題は大きく2つです。QRなどから友だち登録してもらった段階では誰が登録していて、もしかするとLINEの登録名ではどのお客さまか判別できない点です。
2つ目は、お客さまからのメッセージにひとつひとつ対応しないといけない点です。しずれの課題点も、みなさんの想像通り、現場への負担が大きくなります。

【ゴール設定】公式LINEお友だち離脱率の低下
定期的な配信を行えば、一定数はお友だちが減ります。コミュニケーションを取ることで、離脱率が低下すれば、サロンの顧客化になっていると言えます。

3.売上向上
美容室公式LINEを使った売上向上の施策として考えられるのは、キャンペーン関連です。閑散期の集客や物販キャンペーンなどの告知が考えられます。公式LINEに登録していただいている時点で、お店へのエンゲージメントはある程度、想定できるので、魅力的なキャンペーンであれば、売上向上に寄与できる可能性は高いと思います。

感想

この場合のリスク要因は、既存顧客へのキャンペーンを連発すると、総じて客単価の低下を招く可能性も否定できません。売上が欲しい、集客が欲しいというだけで無計画な顧客へのキャンペーンはネガティヴに働きます。また美容室公式LINEのお友だち限定などにすると、現場オペレーションが複雑化するので、消耗も激しいことになりがちです。

【ゴール設定】キャンペーン売上の向上
公式LINEに告知する以前より、キャンペーン売上が向上したら効果があったと認識できます。または公式LINE限定のキャンペーンにすることで、よりはっきりと効果測定ができます。

4.予約ルート
この予約ルートというのは、有料ポータルサイトからの予約を独自予約ツールへの移動となります。有料ポータルサイトの場合、予約1件に対して、何パーセント、もしくはいくら、という形で課金されます。新規集客を頑張るほど、この重量的な課金は重くなっていきます。クーポンと課金のバランスがよければ、マイナスにはなりませんが、もしこの従量課金がなければ、利益が上ましになることは明確です。

感想

これも多くのサロンが実施していることですが、意外と進まないのが現状のようです。理由はいくつか考えられます。
(1)ポータルサイトの予約動線がわかりやすい
(2)ポータルサイトのポイントがつく
(3)習慣
お客さまからすれば、公式LINEから予約しても、ポータルサイトから予約しても、予約ができるという結果は同じです。であれば、簡単な方、メリットがある方を選択するのは必然です。公式LINEから予約する必然性がないと同線を促進することは困難です。

【ゴール設定】既存客のポータルサイト経由の予約数が減少し、独自予約ツールの予約数が増加すれば効果があったと言えます。理想的には公式LINEお友だちの30%程度が独自予約ツールからの予約になれば、成功と言えます。

5.その他
いくつかのケースがあります。・ECサイトへの誘導・系列店舗への誘導・マーケティング調査など。
自社でECサイトを持っていれば、登録してくれている多くのお客さまに直接アプローチできる公式LINEは有効的な手段です。ここで言う系列店舗というのは、美容室以外の業態をしているケースを想定しています。またマーケティング調査はアンケートなどを実施することが想定できます。ただお友だち数が多いことが前提となります。

【ゴール設定】それぞれのパターンにより異なる。
売上、予約、アンケート回収数など、それぞれのケースによって異なってきます。

これらのゴール設定で、本当に十分か?

ここまでに設定した5つのゴールは、とても単純なものです。そして多くの美容室がすでに実施しているものです。最近では、このようなシンプルな案件設定では効果が得にくい状況になってきています。その要因は、一般人の公式LINE慣れ、そしてSNSによって代替できるサービスが増えたからです。ですので、これら5つのゴール設定では不十分だと思います。

公式LINEで経営にプラスになる施策をするために必要なことは?

入口

すべてのお客さまに公式LINEに登録してもらう

【どうする?】
来店されたお客さまは必ず公式LINEに登録する動線を作る。
→新規客の場合、名前・住所などを記入する用紙があると思います。このカウンセリングシートを電子化して公式LINE経由でお客さまにお渡しする。

最近ではPOSでも、手前味噌ながらうちの美歴でも、同様の機能は装備されているツールが増えています。新しいお店で名前、住所などを記入しないといけないのはお客様のなかで常識になっています。ですので、自然な流れで記入していただき、その結果、自然と公式LINEのお友だち登録することとなります。

CRM

CRMツールを導入する

【どうする?】
POSやSTORES.予約などのCRMツールを導入しましょう。手作業ではできません。

なぜツールを導入すべきかと言えば、いつ来店して、どのメニューを施術したか、人の力では管理できないからです。また公式LINE(恐らく専用ミニアプリ)との紐付けも重要な要素になります。お客さまのLINEと公式LINE(もしくはミニアプリ)のアカウントが紐づかないと顧客管理ができず、期待する効果は出せません。

美容師連携

顧客パターンに合わせた施術、メニュー、予約方法を設定する

【どうする?】
顧客を大きく5つのパターンに仕分けします。(髪質、悩み、デザインなど)
それぞれのパターンに合わせたアプローチ方法を設定します(グレーカラーには白髪染め対策などのクーポン)

POSやCRMツールを使って顧客を体系化します。美容室によって種別は変わると思います。
広がりやすい、ボリュームなどの悩みで区別するのがわかりやすいです。
そして、例えばその5つの悩みへの対策をクーポンもしくはメニュー化します。その後、CRMツールを使って、それぞれの悩みの人へピンポイントのクーポン提案を行います。

情報収集(サロン)

お客さまの情報をつねにアップデートする

【どうする?】
CRMツールでもPOSでも、公式LINEのパターン別クーポンなどで来店されたお客さまの状態をつねにバージョンアップ。
次回の個別メッセージのときに、アップデートでした内容を送信する。

お客さまの状態は、来店前と来店後では変わっているはずです。例えばグレーカラー対策をした人に、来店前のようなメッセージを送ってしまっては、意味がありません。そこで、つねにお客さまのバッジを書き換える必要性があります。現場スタッフには商品販売の営業をさせるのではなく、お客さまの状態をつぶさにアップデートしてもらうことのほうが重要です。

現場のすべき仕事を減らして、集中させる

さて、ここまで来てお気づきでしょうか?
恐らく現場の公式LINEにおける仕事は減っているはずです。
そもそも、、、
「公式LINEのお友だちに登録してください!」がなくなりました。これが現場がもっとも嫌がる仕事です。
さらに
「不要な情報がたくさん来るのよね」も顧客マッチな情報を配信するので減るはずです。
現場の負担をいかに減らしていくか。これはDXを実施する時の最重要テーマです。

このように現場の仕事を減らして、バックオフィスもしくは営業時間外にできる仕事が増えることで、売上や戦略がコントロールできるようになります。美容室経営において、現場ではなく、営業時間中でもないときに組める戦術を増やしていくことが重要なことです。

このようにして得られるゴール設定は、顧客ロイヤリティとLTVの向上

結論

このステップで得られるのは、顧客ロイヤリティ(満足度)とLTV(顧客生涯価値)の向上です。
なんか、言葉にすると安っぽく聞こえますが、デジタルでいかに関係性の深い顧客を創っていくかです。
サロンワークで、美容師さんがお客さまとの関係性を深める。
そしてデジタルで、お客さまからの情報を収集して、利便性を高めていく。
この両面が成立することで美容室のお客さまという枠を超えます。対面している美容師さんとオンラインでフォローするデジタルによって、髪の毛だけでなく、様々な提案ができるようになります。お客さまと生涯にわたってお付き合いしていくのに、人間の能力だけで頼るのは限界があります。
美容室公式LINEを活用したゴールは、表面的なことに設定するのではなく、より深いところに設定することができる時代になっています。

顧客満足におけるデジタル化のツールのひとつとして、「美歴」のサイトも参考にしていただけますと幸いです。

公式LINEのゴールの一つとしてECサイトが考えられます。ぜひ、こちらの記事もご参考ください。
「美容室はECサイトを持つべきか、持たないくていいか?」