販売データ(POSデータ)は生より調理したほうがいい
最近のPOSはとても機能性が高まっています。分析機能も充実しています。経営コンサルタントや専門家による支援により、様々な分析ができるようになっています。
POSが本領を発揮するのは美容室ではない
本題に入る前に、POSの成り立ちを振り返ってみたいと思います。
POSとは小売業の売上や価格、商品をデータ化して管理するシステムのことで、「POINT OF SALE」の頭文字からPOSと呼ばれています。販売の管理や分析をベース機能として、その店舗で売れやすいものの支援をしているといえます。
いつ、どこで、誰が、どんな商品を、いくら購入したか、が大量のデータとして収集・分析できることで、最適な品物を、最適な量と価格で配分できることが大きなメリットです。
ここで重要なのはPOSシステムではなく、どんな商品が扱われているか、です。
それはなぜか?
POSで重要なのは、”購入した人が自分の意思で購入したかどうか”です。
多くの小売店、例えばコンビニであれば、消費者はそこで売っているものが何か、を理解して購入しています。だからこそ、どんな人が何を購入したか正確に捉えることができます。
しかし、例えば家電量販店で、あなたがポソコンを購入するとき、店員さんに「パソコンが欲しいんだけど、どれがいいかな?」と聞いて、勧められたパソコンを購入したとき、あなたが選んだもの、と言えるでしょうか?
パソコンを買う理由は年齢や性別よりも、その人の使い方によって異なります。
つまり誰が、という分析はなかなか当てはまりにくいものとなります。
またコンビニであれば、天気や時間によっても売れる商品は大きく変わります。しかし、天気や時間でパソコンの売れ行きが大きく変わることはないでしょう。(もちろん雨の日や夜は売れ行きが悪くなるとは思いますが、、、)
こう考えると、POSが生かされる業種とそうでない業種があるのでは、という仮説が生まれます。
同様に、美容室の場合はどうでしょうか。
美容室はある程度、年齢によって購入される商品群は絞られますが、美容室で販売される美容商材も、多くの場合、美容師さんのアドバイスのもと購入されるケースが多いのではないでしょうか。
であれば、購入者の年齢などだけで分析してしまうのは正しいと言えるのでしょうか。
もちろん、ある程度の方向性は絞れると思います。ただ小売店ほどシンプルな分析は難しいかと思います。(もしかしたら、小売店も、もはや分析はシンプルではなくなっているかもしれません)
こう考えると、POSのような定量的なデータだけでは分析できないのではないでしょうか。
このような定量的なデータの分析だけだと、どんなことが起こるかというと、対策が一辺倒なものになってくると思います。会計データの分析だけだと、再来率をあげる、平日の集客を増やす、客単価をあげる、、、など多くの美容室が悩んでいることに集約されてしまう可能性があります。
こうなると方法論もかなり平均的になってくるので、対策はどこの美容室も同じものになると思います。
POSデータに味付けをすることで、その価値はグッと高まる
ちょっと想像してみてください。
例えば、隔週で来店されるお客さまがいたとします。
このお客さまは恐らくその店舗では、VIP客とかロイヤル顧客とか分類されることでしょう。
POSのデシル分析してみたら、確実に上位に入るでしょうから、十分な顧客満足を感じていて、大切にすべきお客さま、と定義されると思います。
それでは、そのお客さまは積極的にあなたのお店に来店しているお客さまと断言できますか?
もしかしたら、勤務先があなたの美容室から近くて、たまたまほかの美容室より近いから来ていただけ、なんてことはないでしょうか?
そのお客さまの家の隣に安くておしゃれな美容室ができても、あなたのお店に通ってきてくれますか?
来店頻度が高いお客さまにも、ポジティブに来店している人と、実はポジティブではない人がいる可能性があります。この分類を見誤ると、新しい施策のために来店しなくなるお客さまが出てきます。つまり、実はポジティブではない常連客を、ポジティブな常連客に変身させる必要性があるのです。
数値以外の顧客属性をどうやって見極めるか、が重要
この傾向は新規客にも当てはまると思っています。新規再来があがらない、と言っている美容師さんは、(もちろん技術や接客に課題があるかもしれませんが)そもそもミスマッチなお客さまとの出会い、そして接客などを行っている可能性があるのではないでしょうか。
それでは、どうすれば対策が取れるのか。
これは個人的な仮説ですが、恐らく、POSから取れる定量的なデータに人間のキャラクターという定性的なデータを組み合わせることがひとつのヒントになると思います。
定性的なデータ収集にはいくつかの方法があると思いますが、アンケートはそのひとつでしょう。
で、負担をかけずに、定性的なデータをとるアンケートといえば、新規来店時に記入していただくカルテ?があると思います。名前や住所、悩みやお店での過ごし方など、どの美容室も初来店時には記入してもらっていると思います。
ここには、人それぞれの定性的なデータ、属人的なデータが詰まっています。
このデータと、お会計による定量的なデータをクロスマッチすることで、より個人にフューチャーしたデータができあがると思います。
新規客の場合、「認知媒体×予約ルート×悩み×年齢×客単価」という複合的なデータの組み合わせで、その美容師さんのお客さまデータが収集できます。新規集客に困っていたり、新規再来が悪かったりした場合、この掛け合わせのどこかに不具合がある可能性があります。
そこを整えることで、すべきことがより明確になってくると思われます。
美容室のデータ収集・分析は、ビッグデータの時代から、カスタマイズデータの時代になっています。
ひとりひとりのお客さまのデータ分析を事前に行うことによって、サロンワークでの対応を変えることができる時代です。ちょっとめんどうですが、失敗したくな消費者が増えている今、事前に収集できるデータから個別分析を行って、的確な対応を美容師さんに提供できるのも、DXの大きな役割になっています。
「美歴」では、顧客属性を図るアンケートも収集できます。デジタルに関する知識は、サロン業務のワークステーション「美歴」も参考にしてみてください。
デジタル化を始める前に、ぜひ、読んでみてください。「美容室デジタル化で”してはいけないこと”とその3つの対策とは?」